瞬間英作文はやめたほうがいいのか?


当英会話教室では、レッスンの一環として「瞬間英作文」と呼ばれるトレーニングメソッドを取り入れています。そのため、新規の生徒さんからお問い合わせがあったときには、「瞬間英作文」がどういったものかを説明しています。その際、「瞬間英作文は効果があるのか?」や「瞬間英作文をすると会話での応用力が鍛えられないのでは?」といった声をよく耳にします。

結論から言うと、瞬間英作文は英会話の力を伸ばす上で大きな効果があります。筆者自身も瞬間英作文を取り入れ英語力を向上させてきた経験があり、実際に当教室の生徒さんもこのメソッドに取り組むことでスピーキング力やリスニング力が向上しています。しかし、何のために瞬間英作文を行うのかその目的を理解していなかったり、やり方を間違えトレーニングすると効果は現れません。また、瞬間英作文を行うことでできるようになること、ならないことを把握していないと、後々戸惑うことになるでしょう。

このブログでは、瞬間英作文の目的、やり方、そしてできるようになること・ならないことに焦点を当てて解説したいと思います。「瞬間英作文は効果があるのか?」と疑問を持っている方や、瞬間英作文とはどういったものか知りたい方にとって、有益な情報を提供できれば幸いです。

文法を意識せず文章を丸暗記してはダメ

英借文も文法知識があってこそ

瞬間英作文を行う際に、テキストに載っている英文をそのまま丸暗記しようとする人がいます。確かに、英会話で使用できそうな会話文をそのまま覚えることは理にかなっているかもしれません。自分で一から文章を組み立てるのは大変な労力がかかるからです。その手間を考えると、使えそうな文章をネットなどで見つけて覚える方が効率的でしょう。

ちなみに、これを「英借文」と言い、実際に筆者も会話で使えそうな英文は暗記しています。しかし、英借文も文法の理解があってこそ有効なのです。理由としては、以下の通りです。

理由①:文法理解のない丸暗記はすぐに忘れる

文法を理解せずにただ丸暗記した英文は、簡単に忘れてしまいます。逆に、文法を理解し、文の構造を把握しながら暗記した英文は、忘れにくいです。なぜなら、その文がどのように組み立てられているかを理解していれば、再現性が高まるからです。

例えば、"By the time he arrived at the station, the train had already left."という文があります。この文には「接続詞」の"By the time"や「過去完了形」の"the train had already left"といった文法が使用されています。こういった英文法の知識や「時制」、「前置詞」に関する知識があれば、この文は暗記がしやすく、また普段から使っていなくても日本語を見れば再現して英作文することが可能です。

しかし、これらの文法知識がなく丸暗記するとどうでしょうか。数日は何とか覚えているかもしれませんが、少し時間が経過したり、使う機会がなかったりすると、簡単に忘れてしまうでしょう。

文法の理解があれば、「この日本語なら接続詞はこれを使って、時制はこれで、前置詞はこれ」といったように自然と文が組み立てられます。これにより、英作文の再現性が高まり、記憶に残りやすくなるのです。

理由②:文法理解のない丸暗記は応用が利かない

文法を理解せずにただ文章を丸暗記すると、応用が利かなくなります。

例えば、"By the time he arrived at the station, the train had already left."という文を考えてみましょう。この文は「彼が駅に着いた時には、電車はすでに出発していた」という意味です。この文をただ丸暗記しただけでは、他の似た状況で正しい文を作ることが難しくなるでしょう。

例えば、以下のような文を作りたい場合を考えてみてください。

・「彼女がパーティーに到着した時には、みんな帰ってしまっていた。」

・「私たちがレストランに着いた時には、閉店していた。」

文法を理解していないと、これらの文を正しく英語に訳すことができません。しかし、文法を理解していれば、以下のように適切な文を作ることができます。

・"By the time she arrived at the party, everyone had already left."

・"By the time we arrived at the restaurant, it had already closed."

これらの文は、「接続詞」の"By the time"や「過去完了形」の構造を理解しているからこそ、正しく組み立てることができます。文法を理解していれば、状況が変わっても適切な文を作ることができ、応用が利きます。逆に、文法を理解せずに丸暗記した文は、その特定の状況でしか使えず、少しでも異なる場面になると使えなくなってしまいます。

これが、文法を理解することの重要性です。

そもそも瞬間英作文の目的とは

英文の丸暗記ではない

さてそもそもですが、瞬間英作文の目的は、英文の丸暗記ではありません。本来の目的は、「学んだ文法を意識しながら正確に速く英作文する」ことです。

スピーキングとは「瞬間英作文」である

スピーキングとは、言いたい日本語を頭の中で瞬時に英語に翻訳し、それを発言することです。つまり、頭の中で英作文をすることになります。相手に伝わる正しい英文を作るためには、英文法の知識が必要です。英文法を知らなければ、正しい語順や時制で文章が作れず、相手に誤解を招きます。そのため、学んだ文法を意識して英文を作ることが求められます。

しかし、それだけでは不十分です。正確であると同時に、速く(瞬時に)英作文する必要があります。そのためには、繰り返しトレーニングを行い、文法の「型化」をすることが必要です。

文法の「型化」とは

「型化」とは、特定の日本語を英語で表現する際に、どの文法を使えば良いか自然に頭に浮かぶようにすることです。「この日本語を英語で言うときは、この文法を使えば良い」といった具合に、文法をパターンとして定着させます。

例えば、「私はアメリカに行ったことがある」という日本語を英訳するとします。このとき、この日本語を見た瞬間に「現在完了形(経験)」の形"have+過去分詞"がすぐに頭に浮かび、それに基づいて瞬時に英作文できることが重要です。

このように、「学んだ文法を意識しながら正確に速く英作文する」ためのトレーニングとして、「瞬間英作文」が活きてくるのです。

瞬間英作文のやり方

丸暗記せず、文法を意識しながら訳す

瞬間英作文のやり方は以下の通りです。

例えば、「私はアメリカに行ったことがある」という日本語を英訳するとします。この日本語を見たとき、まずどの英文法を使用すべきか考えます。「行ったことがある」という部分は「経験」を表していますので、「現在完了形(経験)」を使用します。英文法をしっかりと学んだ方なら、「現在完了形の経験」(have+過去分詞)がぱっと思い浮かぶでしょう。

次に、この文法を意識しながら文章をゆっくりでも構いませんので、構築してみます。回答例があれば、自分が構築した文章と照らし合わせ、相違点を分析します。そして再び、日本語を見た際に文法を意識して英作文を行います。これを何度も繰り返していきます。

最初はゆっくりでも良いですが、徐々に訳すスピードを速くしていきます。瞬間英作文は本来口頭で英語を口に出しながら行うものですが、最初難しければ紙に文章を書きながら行っても良いです。ただしこの際、文章は必ず音読するようにしてください。

最終的には、日本語を見た瞬間に瞬時に訳せるようになるまで繰り返しトレーニングします。重要なのは、何も考えずに訳すのではなく、「ここでは現在完了形の経験を使用する」ということを意識しながら訳すことです。そうしないと、その文法の本来の使い方が定着せず、英文だけを丸暗記してしまう形になります。

ですので、あくまでも文を丸暗記しようとするのではなく、「なぜその形の文章になるのか」を意識しながら素早く英訳してください。次に、「その製品を使ったことがあります」や「同じような経験をしたことがあります」など、類似の文法を使った文章を英訳してみます。

先ほどと同様に、最初はゆっくり訳しても問題ありません。日々トレーニングを続け、文章を見た瞬間に徐々に速く訳せるようにします。日本語文を見て、瞬時に使うべき英文法を選択し、英文を構築する。この練習を繰り返すことで、「経験」を表す文章に出くわした際に、即座に「現在完了形」が出てくるようになります。

これが本来の瞬間英作文のやり方です。重要なのは、英文を丸暗記するのではなく、日本語文を見た際に文法を意識しながら英文を作ることです。

様々な修飾語を付けてみる

さて、今度はいつも瞬間英作文を行っている文章に、いろいろ修飾語を付けてみましょう。例えば、「私はアメリカに行ったことがある」という文章。「私は以前アメリカに行ったことがある」と「以前」という副詞をつけると、文章はどうなるでしょうか。また、「私は以前、彼の出身地であるアメリカに行ったことがある」という文章の場合はどうなるでしょうか。このように、元の文章に修飾語を加えてトレーニングしてみてください。

このトレーニングの狙いは、副詞や関係代名詞などの修飾が付いても、正しい語順で文章を作れるかどうかを見ています。初心者の方でよく起こるのは、修飾が付いた途端に、副詞の位置が分からなくなり、言葉に詰まってしまったり、語順がバラバラになってしまうことです。様々な修飾が付いても、正しい語順でスムーズに発言するためには、このような練習が欠かせません。

仕上げ

シーン別英会話・フリートークを取り入れる

さて、最後の仕上げとして、シーン別英会話(ロールプレイ)やフリートークを取り入れてください。

シーン別英会話とは、「ホテルでトラブルが発生した場合」や「現地の土産物屋との値段交渉」など、あらゆるシーンを想定して行う英会話です。

フリートークとは「昨日何をした?」や「自分の趣味について」など、その場で話したいことを話す日常会話の練習です。

瞬間英作文だけでは、ペラペラに話せるようにならない

よく瞬間英作文を行う方から、「瞬間英作文のトレーニングをしても全然ペラペラ話せるようにならない」という声を聞きます。それも当然です。瞬間英作文のトレーニングだけではペラペラに話せるようにはなりません。

瞬間英作文の主目的は、自分の言いたいことに対して適切な英文法を選定し文を作ることです。それを繰り返し行うことで、英会話における英文法の使い方を頭に定着させることが目的です。しかし、日本語文があらかじめ提示され、それを英訳する練習であるため、普段の会話とは異なります。

普段の会話では日本語文は提示されず、予期せぬ話題に対応する必要があります。そのため、仕上げのトレーニングとして行うべきは、先述したシーン別英会話やフリートークです。これらの練習を通じてペラペラ話せるようになるための英会話の訓練を行う必要があります。

英語でスピーキングを行う際には、具体的には以下のプロセスが必要です。

1. 頭の中で自分が言いたいこと(日本語)を即座に構築する

2. それを瞬時に英訳(瞬間英作文)する

・2-1:言いたいことに対して適切な英文法を選定する

・2-2:適切な英単語、熟語を文に当てはめる

3:英作文したものを言葉として発する

このプロセスを高速で行うことが日常会話では求められます。これを高速で行えるようにするためには、実践的なトレーニングが必要です。

本ブログのテーマである瞬間英作文は、上記プロセスの2-1の部分にあたります。この観点から、瞬間英作文は英会話において必要な条件ではありますが、十分ではありません。プロセスの2-1の練習だけをして「これができればスラスラ話せる」と勘違いしている方が多いです。

ペラペラ話すためには、瞬間英作文を含め、上記の1~3のプロセスを連続して行う必要があります。そのためには、シーン別英会話や日常会話といったより実践に近いトレーニングで磨いていくことが不可欠なのです。

まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

瞬間英作文は、英会話の能力向上において効果的であり、必要不可欠なトレーニング方法です。文法を意識しながら英作文を繰り返すことで、適切な文法の使い方が頭に定着し、日常会話におけるスピーキング力を養うことができます。

しかし、瞬間英作文だけでは十分ではありません。ペラペラに話せるようになるためには、実際の会話の中で即座に反応する能力が求められます。シーン別英会話やフリートークなどの実践的なトレーニングを併用することで、予期せぬ話題にも対応できるようにしていく必要があります。

このように、瞬間英作文と実践的な会話トレーニングを組み合わせることで、効果的に英会話の能力を向上させることができます。英会話の初心者の方は、これらの方法をバランスよく取り入れることで、よりスムーズに英語を話せるようになっていきます。

なお当教室では、英文法の講義の後に瞬間英作文を徹底的に行い、その後シーン別英会話やフリートークを実施します。レッスンの内容は、講義が3割、アウトプットが7割で構成されており、アウトプットが主体です。瞬間英作文には市販のテキストを使用せず、講師が各生徒の日常で使いそうな文章を作成し、トレーニングを行います。また、シーン別英会話やフリートークでは、これまでに学習した文法や英単熟語が活用できるように内容がデザインされています。

このように、生徒が実際に英語を使うシーンを想定して教材を作りこむことで、学習のモチベーションを高めることを狙っています。もしレッスンに興味がありましたら、是非お問い合わせ頂けたらと思います。

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投稿者プロフィール

Tommy
Tommy英語壱番 代表
幼少~高校まで語学に興味はなく、大学時代に一念発起し、英語力に磨きをかける。卒業後、某メーカーの海外営業としてインドネシアに駐在し、東南アジアに位置するメーカーに製品の提案、販売に従事。現在は主に対面、オンラインの双方で英語を教えている。カナダと中国に留学経験あり。英語のほか、中国語、インドネシア語も堪能。
資格:TOEIC 970、HSK 6級