restの語源について

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先日、当教室の生徒さんに“rest”という英単語の使い方について教えていました。

“rest”には「休息」や「休む」という意味と、「残り」という2種類の意味があります。

その際に生徒さんから「なぜ“rest”という単語には2つの異なる意味があるのか?」と質問がありました。

長年英語を使ってきましたが、私は“rest”の意味や使い方をそのまま覚えていて、意味の違いについて深く考えたことがありませんでした。

確かに、この一つの単語になぜ2つの異なる意味があるのでしょうか?

その質問がきっかけで“rest”の語源やこの英単語の歴史に興味を持ち、色々調べてみることにしました。

"rest"の基本的な意味、使い方と発音について

ご存知の方も多いと思いますが、上述したように"rest"には2種類の意味があります。

各々名詞と動詞として使われるので、それぞれの意味をしっかりと見ていきたいと思います。

1つは、名詞として「休息」「休養」という意味。

動詞としては「休む」「休息する」という意味で使用されます。

名詞「休息」「休養」の意味で使われる場合の例文:

I need a rest after a long day at work.

仕事の長い一日の後に休息が必要だ。

She took a short rest before continuing her journey.

彼女は旅を続ける前に少し休憩を取った。

動詞「休む」「休息する」の意味で使われる場合の例文:

You should rest for a while.

しばらく休むべきだ。

He rested on the couch all afternoon.

彼は午後ずっとソファで休んでいた。

さて、もう一つは名詞として「残り」「残っているもの」、動詞として「相変わらず〜だ」「残る」といった意味で使用されます。

名詞「残り」「残っているもの」の意味で使われる場合の例文:

I finished most of the work; the rest can be done tomorrow.

仕事の大半は終わったので、残りは明日やればいい。

Please give the rest of the cake to John.

ケーキの残りをジョンにあげてください。

動詞「相変わらず〜だ」「残る」の意味で使われる場合の例文:

It rests with you to decide the next step.

次のステップを決めるのはあなた次第です。

The responsibility rests on his shoulders.

その責任は彼の肩にかかっている。

そしてこの双方とも意味は異なりますが、会話の中で使われる際は”rést”という同じ発音で発せられます。

"rest"の語源と歴史について

さて、なぜこの英単語は1つの単語で異なる2種類の意味を持つようになったのでしょうか?

結論から言うと、2種類の意味を持つようになったのは、それぞれの語源が異なるためです。

名詞「休息」「休養」の語源・歴史について

「休息」「休養」という意味の"rest"は、「古英語」という大昔に使われていた英語の"ræste"や"reste"という単語から来ています。

ちなみに古英語は「こえいご」と読み、英語で"Old English"と呼ばれます。

古英語というのは、5世紀から11世紀頃に現在のイギリスで主にアングロサクソン族という民族の間で話されていた言語です。

我々が勉強している英語のご先祖様にあたります。

この古英語の"ræste"や"reste"は具体的に「休息、寝床、労働の中断、精神的な平和、静かな状態」を意味していました。

これらの言葉は、もっと古い時代に遡ると「ゲルマン祖語(プロト・ゲルマン語)」という言語の"rasto-"という単語に由来します。

「ゲルマン祖語(そご)」というのは、紀元前500年から紀元後500年頃にヨーロッパ北部や中央部でゲルマン民族によって話されていた言語です。

現在のドイツ語、英語、オランダ語、スウェーデン語、ノルウェー語、デンマーク語などの言語の祖先にあたります。

この"rasto-"という言葉は、当時「休息場所」という意味や「マイル」みたいな「距離の単位」として使われていました。

ここから古英語の"ræste"や"reste"に発展し、英語の"rest"(休息)へ派生しました。

その後、名詞としての"rest"は、次のように変遷してきました:

14世紀半ば: "At rest"(「死んでいる」)という表現が使われ始める。

15世紀後半: 「運動の欠如または停止」という意味で使われるようになる。

1580年代: 「支えになるもの」という意味で使われるようになる。

1570年代: 音楽で「無音の間隔」を示す記号として使われるようになる。

1970年頃: 高速道路の休憩所を意味する「rest stop」が使われるようになる。

動詞「休む」「休息する」の語源・歴史について

今度は動詞の「休む」「休息する」の語源と歴史を見ていきましょう。

動詞「休む」「休息する」の意味で使用される"rest"は、古英語の"ræstan"や"restan"に由来します。

これらの動詞は当時、「横になって休む、動きを止める、静止する、心配のない状態でいる、支えの上に立つ」を意味していました。

先ほどの名詞の項目で記した"ræste"や"reste"は名詞であり、"ræstan"や"restan"はその動詞形です。

これらの単語もさらに遡ればゲルマン祖語に辿り着き、"rastejanan"という単語が起源となっています。

ゲルマン祖語の"rastejanan"が古英語の"ræstan"や"restan"に発展し、その後、中英語(11世紀から15世紀までイギリスで使われていた英語)において"resten"という形になりました。

なお中英語は「ちゅうえいご」と読み、英語で"Middle English"と書きます。

古英語の後に使われていた英語ですね。

なお、動詞「休む」「休息する」としての"rest"は、その後次のように変遷していきました:

13世紀初期: 「安息を与える」という意味で他動詞として使われるようになる。

14世紀後半: 「中断する、休憩する」という意味でも使われるようになる。また "rest in"(「〜を信じて待つ」)という表現が使われ始め、聖書などでも見られるようになる。

19世紀末: 「体力を回復する」という意味の"rest up"がアメリカ英語で使われ始める。

20世紀初頭: 法律用語として「証拠提出を終了する」という意味で使われるようになる。

「残り」「残る」としての"rest"の語源・歴史について

既述のとおり、"rest"は「休息」や「休む」以外に、名詞として「残り」、動詞として「相変わらず~だ」や「残る」という意味もあります。

こちらも名詞と動詞でその起源を追ったのですが、具体的に記載のある文献が少なく、調査が難航しました。

結論として、この「残り」や「残る」という意味はフランス語から来ています。

具体的には、フランス語の前身であるラテン語の"restare"に由来します。

"restare"は「後ろに立つ、残る」という意味で使われており、"re-"(後ろに)と"stare"(立つ)から成り立っています。

このラテン語の単語が基盤となりました。

その後、ラテン語の"restare"からフランス語の"rester"が派生しました。

"rester"も同様に「残る」という意味を持ちます。

このフランス語の単語が中世フランス語を経て、英語に借用された形となります。

この「残り」や「残る」の意味で使用される"rest"は、次のように変遷していきました:

15世紀初め: フランス語の"reste"から借用され、英語に取り入れられる。

1530年代: 「提案に含まれない他の人々」という意味も持つようになる。

18世紀末: 「他のすべて、他の人々」という意味でも使われるようになる。

フランス語由来の単語はどうやって流入したのか?

ここまで、"rest"という単語にまつわる起源や歴史を見てきました。

上述したように、英語はもともとゲルマン祖語から分化していった言語です。

しかしながら、英語には"rest"のみならず、多くの単語にフランス語由来のものが見受けられます。

この理由としては、1066年に「ノルマン・コンクエスト」という出来事がありました。

この際に、フランス語(特に古フランス語)から多くの単語が英語に借用されました。

ノルマン・コンクエストとは?

ノルマン・コンクエスト(Norman Conquest)とは、1066年にノルマンディー公ウィリアムという人がイングランドを征服した出来事です。

ノルマンディーは現在フランス北部に位置する地方として知られていますが、当時は独立した公国(ノルマンディー公国)でした。

ウィリアムはその公国の領主でした。

ウィリアムがイングランドを征服したことで、ノルマンディーから来た貴族たちがイングランドを支配するようになりました。

ノルマン貴族はフランス語を話していたため、フランス語が支配層の言語としてイングランドに広まりました。

この影響で、英語には多くのフランス語由来の単語が取り入れられました。

ホモニム(homonyms)について

さて、"rest"という単語はゲルマン祖語の"rasto-"(休息)とフランス語由来の"restare"(残る)という異なる語源を持つ意味が同じスペル、同じ発音で融合されました。

このように英語には、意味は異なるがスペルと発音が同じ単語が多く存在します。

意味は異なるが同じスペル・発音の単語を使用することで、言語が簡略化され記憶しやすくなります。

つまり、言語の学習と使用が容易になるという狙いがあります(人々が学習しやすくなるのです)。

ちなみに、"rest"のようにスペル、発音は同じだが全く異なる意味を持つ単語を英語では「ホモニム(homonyms)」と言います。

同音異義語のことですね。

以下にいくつかホモニムの例を挙げます。

ホモニム(homonyms)の例:

・Bat

意味1:野球やクリケットで使う「バット」

意味2:夜行性の飛ぶ哺乳類「コウモリ」

・Match

意味1:スポーツの「試合」

意味2:火をつけるための「マッチ棒」

・Right

意味1:正しい「正解」

意味2:権利「人権」

・Bank

意味1:銀行

意味2:土手、岸

これらのホモニムは、文脈によって意味が決まります。

英語学習者にとっては混乱しやすいかもしれませんが、文脈を理解することで適切な意味を見分けることができます。

英語はこの他にも、例えば”Lead(鉛/導く)”、”Tear(涙/裂く)”、”Bow(弓/おじぎ)”のようにスペルは同じだが発音によって意味が異なる「ホモグラフ(homographs)」というものや、”Bear(熊/耐える)”と”Bare(裸の)”、”Pair(対/ペア)”と”Pear(梨)”、”See(見る)”と”Sea(海)”のように発音は同じだが、スペルと意味異なる「ホモフォン(homophones)」というカテゴリーに分類されるものも数多く存在します。

まとめ

本ブログでは"rest"という英単語について、その語源と歴史を遡って見てきました。

同じ発音、スペルでも文脈によって意味が異なるのはとてもユニークです。

このように"rest"のみならず、英語には同じスペルや発音で異なる意味を持つ単語が多く存在します。

単に丸暗記するよりも、その単語の語源や歴史を知ることで、英語学習が一層楽しく、頭に定着しやすくなると思います。

当教室のブログでは今後もその他の英単語や英語表現に焦点を当て、その語源や歴史、文化にまつわる豆知識を紹介していきたいと思います。

参考文献

・Merriam-Webster. "Homophones, Homographs, and Homonyms."
https://www.merriam-webster.com/words-at-play/homophones-homographs-and-homonyms

・Wikipedia. "Homonym."
https://en.wikipedia.org/wiki/Homonym

・ThoughtCo. "Over 300 Homonyms, Homophones, and Homographs."
https://www.thoughtco.com/what-are-homonyms-homophones-and-homographs-1691053

・Really Learn English. "What Are Homonyms? Homonyms, Homographs, Homophones and Heteronyms Explained."
https://www.really-learn-english.com/what-are-homonyms.html

・Online Etymology Dictionary. "rest."
https://www.etymonline.com/word/rest

・Wikipedia. "Norman Conquest."
https://en.wikipedia.org/wiki/Norman_Conquest

・Wikipedia. "Old English."
https://en.wikipedia.org/wiki/Old_English

・Wikipedia. "Proto-Germanic language."
https://en.wikipedia.org/wiki/Proto-Germanic_language

・Britannica. "Norman Conquest."
https://www.britannica.com/event/Norman-Conquest

・The History of English. "Borrowing from French."
https://historyofenglishpodcast.com/2013/07/30/episode-43-norman-borrowings/

・Wikipedia. "List of Germanic and Latinate equivalents in English."
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Germanic_and_Latinate_equivalents_in_English

・History Hit. "Why Are So Many English Words Latin-Based?"
https://www.historyhit.com/why-are-so-many-english-words-latin-based/

・Wikiversity. "English as a hybrid Romance-Germanic language."
https://en.wikiversity.org/wiki/English_as_a_hybrid_Romance-Germanic_language

・Britannica. "Norman Conquest."

https://www.britannica.com/event/Norman-Conquest

・The History of English. "Borrowing from French."

https://historyofenglishpodcast.com/2013/07/30/episode-43-norman-borrowings/

投稿者プロフィール

Tommy先生
Tommy先生英語壱番代表
1989年 福岡県北九州市生まれ、愛知県名古屋市育ち。
幼少~高校まで語学に興味はなく、大学時代に一念発起し、挫折を繰り返しながらも英会話力に磨きをかける。

新卒で工業用消耗品メーカーに入社。インドネシアに駐在し、東南アジアに位置するメーカーに製品の提案、販売、工程の生産性改善に従事。

その後、製造業 x ITベンチャー企業に入社。営業部門の立ち上げやグロースに携わり現在に至る。

TOEIC 870(2012年取得)
新漢語水平考試 HSK 6級(2020年取得)
貿易実務検定試験 C級(2015年取得)

趣味:サッカー観戦、楽曲制作(DTM)、旅行、読書