英語の聞き流しは意味ない?初心者が取り組むべき学習法
当教室の無料カウンセリングを受けられる方から、「聞き流しをすると英語力は伸びるのか?」という質問を時折いただきます。
結論から申し上げますと、英会話の初心者が英語を聞き流しても、リスニング力やスピーキング力が向上することはありません。
本ブログでは、なぜ英会話の初心者が英語を聞き流しても英語力が伸びないのか解説していきます。
また同時に、リスニング力やスピーキング力を向上させるために、初心者がまず取り組むべきことについても述べています。
「英語の聞き流しってどうなのだろう」と疑問に思っている方や「初心者は何から勉強を始めるべきか」と悩んでいる方にとって、参考になれば幸いです。
聞き流しをしてもリスニング力は向上しない
リーディングのできない文章は、聞いても分からない
「聞き流しをすればリスニング力が上がる」と耳にしたことがあるかもしれませんが、これは本当でしょうか?結論から言うと、ただ闇雲に聞き流しても、リスニング力が向上することはありません。
その理由を説明するために、まず以下の会話文を見てみましょう。これは、アメリカで人気のあったドラマ『フレンズ(Friends)』のシーズン1、エピソード21「The One With The Fake Monica」から抜粋したものです。
Joey: How could someone get a hold of your credit card number?
Monica: I have no idea. But look how much they spent!
Rachel: Monica, would you calm down? The credit card people said that you only have to pay for the stuff that you bought.
Monica: I know. It's just such reckless spending.
Ross: I think when someone steals your credit card, they've already thrown caution to the wind.
Chandler: Wow, what a geek. They spent $69.95 on a Wonder Mop.
これらは日常的な会話文ですが、内容は理解できたでしょうか。特に問題なく理解できた方は、このブログを読む必要はありません。しかし、もし理解できなかった方は、そのまま読み進めてください。おそらく英会話の初心者の方には理解が難しい部分があったのではないでしょうか。
まず、文章内に知らない単語や文法が多くありませんか。
"calm down"の意味はわかりますか?
"reckless"や"geek"の意味は?
また、"The credit card people said that you only have to pay for the stuff that you bought."という文章で、"that"が2回出てきますが、最初の"that"と後の"that"の文法的な違いを説明できますか?
このように、読んでも理解できない文章は、当然聞いても理解できません。何度聞いても意味がわかるようにはならないのです。理由は単純で、単語や文法といった基礎的な知識が欠けているからです。
よく「英語の音やリズムが聞き取れない」という理由でリスニングができないと仰る方がいますが、それ以前に単語や文法の知識がなければ、聞き取ることはできません。初心者の方がまずすべきことは、英語を聞き流すのではなく、会話に必要な基礎知識を身につけることです。
聞き流しをしても、スピーキング力は向上しない
以前、ある英語教材で「聞き流すだけでスピーキング力が向上する」と話題になったことがあります。しかし、英会話初心者がこのような教材を使っても、スピーキング力が向上することは期待できません。
その理由は、単語や文法などの基礎的な知識が不足しているからです。文法の知識がなければ、聞き取った文章をそのまま自分の口で再現することは難しいでしょう。たとえ音を聞き取れても、その文法や単語の使い方が理解できていなければ、スピーキングはうまくできません。
スピーキングとは英作文である
スピーキングとは、頭の中で瞬時に日本語を英語に翻訳し、それを発言する作業です。つまり、瞬間的に頭の中で英作文をしているのです。うまく英作文をするためには、何が必要でしょうか?それは、英文法と単語です。その中でも特に重要なのは英文法です。なぜなら、語順を間違えたり、時制(過去か未来かなど)に決定的なミスがあると、自分の伝えたい意思が相手に伝わらず、誤解が生じる恐れがあるからです。
英文法は、建築の工法に似ていると言えるでしょう。いくら素晴らしい建築材料(英語で言うなら単語や熟語)が揃っていても、工法に従わず適当に作ってしまうと、建物は崩壊する可能性があります。同様に、英文法に従わずに単語をただ羅列するだけでは、意思疎通はうまくいきません。挨拶程度の会話なら、身振り手振りで何とかなるかもしれません。しかし、深い会話をしようとすると、身振り手振りやフィーリングだけでは残念ながら伝わりません。
相手に確実に伝わる英文を構築するためには、英文法や単語といった基礎的な勉強が必要です。これは地味ではありますが、避けて通れない道なのです。
まずは英文法を習得する
上述のように、英会話の初心者がリスニング力やスピーキング力を向上させるためには、英文法や英単語といった基礎的な知識の習得が必要不可欠です。
ここからは、特に英文法に焦点を当てて、どのように勉強を進めるべきかを解説していきます。
分厚い参考書の使用は避ける
よく書店の語学学習コーナーなどで最近英語を学び直す大人の方向けに色々おすすめの参考書を紹介しているのを目にします。
その中で大学受験で使用される400ページや500ページの分量からなる分厚い文法テキストがおすすめされたりしています。
結論からいうと、英会話の初心者の方はこういった大学受験で使用されるような英文法書の使用は避けてください。
理由としては、3つあります。
中学英文法で意思疎通できるから
日常で見られる英会話を分析すると、重要なのは中学1年から中学3年で学ぶような、いわゆる中学英文法がそのコアとなっていることがわかります。
実際、筆者も海外の方と意思疎通する際に、ほとんど中学英文法を使っています。
中学英文法を習得すれば、ある程度伝えたいことに困ることはなくなります。
そのため、まずは中学英文法の習得から始めてください。
モチベーションの維持が難しいから
大学受験用の英文法の参考書には、中学1年から中学3年で学ぶような基本的な英文法が網羅されています。しかし、それ以外にも、今すぐ覚える必要のない事項や、細かい文法の説明まで様々な内容が混在しています。
初心者の方は、どこに重点を置いて学習すべきかが分からないため、必要のない部分にも手を出してしまいがちです。すると、一つの単元を学習し終えるのに膨大な時間がかかってしまいます。
「to不定詞の項目、勉強し始めてから3日経つけど、全然終わらない・・・」といったように、一つの単元がなかなか完了しないため、達成感を得られず、次第にモチベーションが低下し、挫折の原因になりかねません。
持ち運びしにくいから
使い勝手を考えると、分厚い参考書は避けたいところです。400~500ページにもなると、重量があるため、持ち運びには不向きです。
自宅以外、例えば図書館やカフェで勉強しようと思っても、持ち運ぶ際に心理的な抵抗が生じ、参考書を手に取るのに時間がかかることがあります。
「重たいし、使いにくいから手に取りたくないな…」
このような気持ちでは、なかなか勉強を始めることができません。
英語は毎日少しずつでも勉強することが上達の鍵です。ですから、勉強に向かう心理的な壁をできるだけ低くし、スムーズに始められるように、ハンディな参考書を使用するのがベターです。
おすすめの英文法のテキスト
当教室で生徒さんからおすすめの参考書について聞かれた際には、くもん出版の「SUPER STEP 中学英文法1~3年」を紹介しています。この参考書は、索引を除いて234ページとコンパクトで、大学受験用の参考書の約半分のページ数となります。ですが、英会話でスピーキング力を伸ばすために必要な知識は十分に網羅されています。大学受験用の分厚い参考書とは異なり、軽量でA5サイズというコンパクトな作りなので、持ち運びにも便利です。手軽に持ち運べる点も、学習意欲を高める要素となっています。
この参考書のもう一つの優れた点は、「ステップ・バイ・ステップ」のアプローチで基礎文法を少しずつ学べるところです。これにより、表現力を徐々に豊かにしていけます。たとえば、
① メアリーは女の子です
⇒ "Mary is a girl."
② メアリーは親切な女の子です
⇒ "Mary is a kind girl."
③ メアリーはとても親切な女の子です
⇒ "Mary is a very kind girl."
や、
① 雨が降っています
⇒ "It is raining."
② 雨が2時間降り続けています
⇒ "It has been raining for 2 hours."
③ 今朝から雨が降り続けています
⇒ "It has been raining since this morning."
というように、基本の文をもとにステップバイステップで文法や修飾を学び、それによって表現がどのように変わるかを対比しながら学ぶことができます。これにより、文法の関連性を理解しやすく、頭に定着させやすくなっています。また、各文法項目については、具体的にどのようなシーンで使われるかや、副詞などの修飾をどこに配置すべきかなどが、過不足なく解説されており、内容のバランスも非常に良いです。
英文法を習得する際に心掛けること
実際に自分で文章を作ってみる
英文法を勉強する際には、実際に学んだ文法を使って、自分なりに文章を作ってみてください。例えば、「日常会話ではこの場面でこの文法が使えそうだな」といったように、具体的なシチュエーションを想定しながら文章を作ることが大切です。
文法の理解を確認するために、穴埋め問題や選択式の問題を解く方がいらっしゃいますが、そこでいくら正解してもスピーキング力やリスニング力は鍛えられません。英会話は基本的に「文章」のやりとりです。相手の英文を聞いて、頭の中で英作文をし、自分の英文を相手に伝える。これが英会話です。会話の中で穴埋め問題や選択式問題が出てくることはありません。
本当に英文法を理解していれば、自分で文章を作ることができるはずですし、相手の言っていることも理解できるはずです。可能であれば、自分で作った文章をネイティブや英語の得意な日本人講師に添削してもらうと更にに良いでしょう。そして、添削された正しい文章を何度も音読してみてください。こうすることで、スピーキングとリスニングの練習が同時にできるようになります。
これが、本来の英文法の勉強法です。英会話初心者の方は、中学1年から中学3年で学ぶ英文法の習得にまずは集中し、他には手を出さずにこの基礎的なトレーニングを繰り返し行うことが、地味ですが最も効果的な方法なのです。
当教室での英文法の学び方
当教室は、英会話の初心者を対象とした教室です。必要に応じて、中学レベルの基礎から英文法を教えています。授業の進め方としては、先に紹介したくもん出版の「SUPER STEP 中学英文法1~3年」に近い内容で進めますが、例文をより日常会話で使えるものにアレンジし、生徒が復習しやすいように工夫しています。
文法のレクチャーが終わった後は、その学んだ文法を使って瞬間英作文(日本語を見て即座に英語に訳して口頭で表現する練習)を行います。この瞬間英作文で使用する文も、生徒が日常生活で使いそうな表現にアレンジしています。また、その文法を活かしたフリートークも実施し、実践力を養います。フリートークで間違えた箇所や改善点は、レッスン後にフィードバックとして生徒に伝え、復習してもらいます。
次回のレッスンでは、学んだ英文法が定着しているかを確認するため、レッスンの冒頭で瞬間英作文の復習を行います。また、フリートークでは前回と同じ質問をして、その文法を使う場面を意識的に設けています。このように、単なる参考書ベースの学習ではなく、実践に近い形で自然と英文法が身につくようにレッスンを構成しています。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。今回のブログでは、「英語を聞き流すだけで英語力は伸びるのか」について考察しました。
結論として、英会話の初心者がリスニング力やスピーキング力を向上させるために、ただ英語を聞き流すだけでは効果がありません。実際に聞き流し教材に挑戦しながらも成果が出ず、挫折し当教室へこられた生徒さんもいらっしゃいます。うまくいかない理由は、英語の基礎となる文法や単語の理解が十分でないまま聞き流しても、内容を正しく理解することが難しく、結果としてリスニングやスピーキングの能力が向上しないためです。
まずは中学レベルの英文法をしっかりと学び、基礎を固めることが重要です。その上で、学んだ文法や単語を使って自分なりに文章を作り、繰り返し声に出して練習することが、スピーキングやリスニングの力を伸ばす鍵となります。具体的なシーンを想定しながら、自分で英文を作ることで、実際の会話でもスムーズに応用できるようになります。
英会話初心者の方にとって、英語学習の第一歩は基礎の徹底から始まります。正しい学習法を実践することで、確実に英語力を伸ばしていきましょう。
投稿者プロフィール
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幼少~高校まで語学に興味はなく、大学時代に一念発起し、英語力に磨きをかける。卒業後、某メーカーの海外営業としてインドネシアに駐在し、東南アジアに位置するメーカーに製品の提案、販売に従事。現在は主に対面、オンラインの双方で英語を教えている。カナダと中国に留学経験あり。英語のほか、中国語、インドネシア語も堪能。
資格:TOEIC 970、HSK 6級
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