インドで英語が通じるのはなぜ?歴史や教育から学ぶ驚きの勉強法とは?

「インド人って、なぜあんなに流暢に英語を話せるのだろう?」--仕事などでインドの方と関わる中で、そんな素朴な疑問を抱いたことはありませんか?

インド人はみんな英語が得意」というイメージがあります。しかし実は流暢に話せるのは国民の約10%とも言われています。

では、私たちの周りで活躍するインドのビジネスパーソンは、どのようにしてあれほど高い英語力を身に着けたのでしょうか。

インド社会で英語が重要な役割を担うようになった歴史的背景や現代の教育事情を紐解きます。さらに、彼らの驚きの勉強法や、コミュニケーションに役立つインド英語の特徴も具体的に解説します。

なぜインドで英語が話されるようになったのか?その起源を歴史から紐解く


インド英語の独特さを理解するには、まずその歴史を知ることが不可欠です。インドと英語の深い関係は、イギリス植民地時代にまで遡ります。

全てはイギリスの植民地時代に始まった

18世紀後半、イギリス統治下で行政や教育の言語として英語が使われ始めました。本格的な普及のきっかけは、19世紀に設立されたキリスト教系のミッションスクールです。これらの学校では英語が教育言語として用いられ、イギリス流の価値観を広める役割も担いました。

この流れを決定づけたのが、1835年の政治家トーマス・マコーレーによる英語教育の提唱です。彼の提言は、イギリス統治を助ける人材育成を目的とし、インドの英語教育の方針を固めるものでした。


>イギリスの政治家トーマス・マコーレー

「イギリス人のように考えるインド人」を作るための教育

イギリス側の狙いは、現地の行政やビジネスを円滑に進めるため、「インド人の外見をした、思考はイギリス的な人材」を育成することでした。

この戦略のため、英語は上流階級向けの教育言語として位置づけられ、「エリートの言語」としての地位を確立。これが、現代に至るまで続く「英語力=エリート」というイメージの原点となりました。

独立後、インド独自の英語文化が誕生

1947年の独立後も、数百もの言語が存在するインドで、英語は「共通語」として重要な役割を担い続け、現在も準公用語として機能しています。

そして、インドの英語は多言語・多文化と融合し、発音・語彙・表現で独自の進化を遂げました。これは「ヒングリッシュ」とも呼ばれる、インドならではの「言語変種」の誕生であり、今日のユニークさの根源となっています。

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インド人はどうやって英語を学ぶ?現代のリアルな教育事情

歴史的背景に加え、現代の教育と社会の価値観が彼らの英語力を支えています。インド人はなぜあれほど流暢に英語を話すのでしょうか。

英語力=エリート?「成功の象徴」としての英語

現代のインド社会、特に都市部の中産階級以上の家庭において、英語は「成功の象徴」です。

「子どもには質の高い英語教育を」という価値観は根強く、英語力は人生の選択肢を広げるための重要な投資と見なされています。

小さい頃から3言語は当たり前?インドの語学教育

多くの州では、子どもたちが「母語・ヒンディー語・英語」を学ぶ三言語政策が導入されています。

ただし教育の質には地域や経済状況による大きな格差があり、都市部の私立校と地方の公立校では学習環境が大きく異なります。

英語がキャリアを左右する社会

この教育格差の結果、流暢な英語を話せるのは主に質の高い教育を受けられる層であり、国民全体では約10%に過ぎません。しかし、この10%がIT業界などを中心に国際舞台で活躍しています。

これらの分野では英語力が就職や昇進に直結するため、英語学習はキャリアのための「必須投資」なのです。この切実な動機が、彼らの学習への強い原動力となっています。

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コミュニケーションに役立つ!インド英語のユニークな特徴

「インド英語が聞き取れない」と感じるのは、その特徴を知らないからかもしれません。ポイントを押さえれば、コミュニケーションは格段にスムーズになります。

まずは耳を慣らそう!代表的な発音・アクセントの特徴

  • R音が「ル」と響く: car → カール, order → オーダル
  • TH音が「タ行・ダ行」になる: thanks → タンクス, this → ディス
  • W音が「V」の音に近くなる: we → ヴィー, west → ヴェスト
  • サイレントレターも発音する: Wednesday → ウェドネスデイ, debt → デブト

知っていると便利な独特の語彙・表現

インド英語には、インドならではの語彙や言い回しが数多く存在します。これらはインド国内ではごく自然に使われていますが、他の英語圏では通じないこともあるので、知っておくと便利です。

項目 インド英語での表現例 意味 標準的な英語表現
進行形の多用 I am not getting you. あなたの言うことが分かりません。 I don't understand.
特有の言い回し yesterday night 昨夜 last night
ヒンディー語由来の言葉 pundit 専門家、評論家 expert, critic

これらの特徴を知れば、「なぜそう聞こえるのか」が理解でき、心理的なハードルが下がるはずです。

動画で聞く「生きたインド英語」

ここまでインド英語の音声的な特徴をいくつかご紹介しましたが、百聞は一見に如かず、です。実際にインドの方が話す英語を聞いて、そのリズムやイントネーションを体感してみましょう。

以下の動画は、台湾在住のインド人の方々へのインタビューです。彼らの自然な話し方の中に、これまで解説したR音の響きやTH音の変化といった特徴のいくつかを見つけられるかもしれません。

さらにインド英語の多様な表現について詳しく知りたい方は、以下の書籍も参考にしてみてください。インド特有の語彙や言い回しが豊富に紹介されており、より深い理解に繋がります。

『新アジア英語辞典』 本名信行・竹下裕子 著(三修社)

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私たちが学ぶべきインド式「驚きの勉強法」とは?

彼らの英語力は才能や環境だけでなく、その根底には、私たちが見失いがちな本質的で効果的な学習姿勢があります。

勉強法①「地道」こそ最強。基本に忠実な反復学習の力

私自身、以前インドのコルカタでホームステイをした際、そこで出会った高校生の英語学習スタイルに深い感銘を受けました。

彼は家庭内では両親とベンガル語で話していましたが、学校の数学や理科は英語で学び、さらに放課後は英語塾に通うという生活を送っていました。彼の勉強法に、特別なテクニックはありませんでした。ただひたすらに、

  • 英文を書き、先生に添削してもらい、それを何度も書き直す。
  • 英文を音読し、完全に暗記するまで繰り返す。

という、地道なインプットとアウトプットの反復でした。日常会話で英語を使う機会は限られているにもかかわらず、この学習法を徹底していました。

それにより彼はIELTSで高スコアを獲得し、見事イギリスの大学への留学を果たしたのです。

この経験は、派手な学習法や近道を探すのではなく、「基本を地道にやり続ける」ことの重要性を改めて私に教えてくれました。当教室でもライティングや音読の指導を重視していますが、彼の姿を見てその意義を再確認したのです。

勉強法②「大胆」であれ。完璧主義を捨てた実践主義

もう一つの大きなヒントは、彼らの英語に対するマインドセットです。多くのインド人は、多少の訛りや文法的な間違いを気にせず堂々と英語を話します。彼らにとって英語はコミュニケーションのツールであり、完璧さを追求することではないのです。

これは、間違いを恐れてなかなか口を開けない私たち日本人にとって、重要な示唆を与えてくれます。

もちろん正確さも大切ですが、「伝えよう」とする積極的な姿勢がなければ、スピーキング力はいつまでも向上しません。

完璧な発音や文法を身につけてから話そうとするのではなく、今持っている知識でとにかく話してみる。 この大胆さこそ、使えるスキルに変えるカギとなるのです。

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まとめ|インドから学ぶ、英語習得への本質的なアプローチ

インドで英語が話される背景には、歴史的な経緯と、強い社会的動機がありました。そして流暢な英語を話す人々は国民の少数派であり、その裏には教育競争と彼らの地道な努力が存在します。

彼らの勉強法である努力と間違いを恐れない実践的な姿勢は、私たち自身の英語学習を見つめ直す絶好の機会となります。

インド英語の特徴と、彼らの社会事情を理解することは、円滑なコミュニケーションと自己成長への第一歩となるでしょう。

世界の多様な英語について、深く知りたい方は以下の書籍なども読んでみてください。

参考書籍:「世界の英語を歩く」, 集英社新書, 本名信行著

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投稿者プロフィール

Tommy
Tommy英語壱番 代表
幼少~高校まで語学に興味はなく、大学時代に一念発起し、英語力に磨きをかける。卒業後、某メーカーの海外営業としてインドネシアに駐在し、東南アジアに位置するメーカーに製品の提案、販売に従事。現在は対面、オンラインの双方にて英語を教えている。カナダと中国に留学経験あり。英語のほか、中国語、インドネシア語も堪能。
資格:TOEIC 970、HSK 6級