ネイティブ英語は通じない?アジアの英語圏で必要なグローバル人材の英語力
アジアのビジネス現場に身を置くことが決まったとき、「これまで勉強してきた英語で通じるだろうか?」と気になっていませんか?
あるいは、アジアのビジネス現場で英語力を試しても、思うように通用せず、コミュニケーションに苦労した経験があるかもしれません。
多くの企業が英会話スクールや企業研修を通じて、いわゆる「ネイティブ英語」を習得することに力を注いできました。しかし実際は、アジアの現場で課題を感じるケースは少なくないのです。
なぜ、ネイティブ英語を学んできたはずの日本人が、アジアの現場で苦戦するのでしょうか。この記事では、その“ギャップ”の背景を明らかにし、アジアのビジネスで真に必要とされる英語力とは何かを解説していきます。
目次
アジア英語圏のビジネスの共通語は「ネイティブ英語」ではない
アジアのビジネス現場で英語が果たす役割は、私たちが学んできた「ネイティブ英語」のイメージとは少し異なります。
それは、異なる国々を結びつける共通の橋渡し役として機能しており、その内容は多種多様です。
この章では、まずアジアで使われる英語の本質的な役割を理解し、その上で、私たちが具体的にどのような英語の多様性に直面するのかを見ていきましょう。
アジア英語圏における英語の役割:「リンガフランカ」としての機能
アジア諸国間でのビジネスにおいて、英語は「リンガフランカ(Lingua Franca)」、つまり異なる言語を話す人々が共通の意思疎通を図るための橋渡し役を担っています。
この英語は、必ずしもネイティブスピーカーが話すような完璧な文法や発音を求めるものではありません。
何よりも大切なのは、お互いの意図を正確に理解し、滞りなくビジネスを進めることです。
お互いの国の言葉を深く習得しているケースは少ないでしょう。
このような状況で使われる英語は、特定の国のネイティブ英語に偏ることなく、シンプルで分かりやすい表現が自然と選ばれます。
当然ながら、発音やイントネーションもそれぞれの母語の影響を受けるため、非常に多様なバリエーションが存在しているのです。
インド、シンガポール、フィリピン… 多様化するアジア英語圏の英語
アジアには、英語を公用語の一つとしている国や、ビジネスで英語が広く使われている国がたくさんあります。
インド、シンガポール、フィリピンなどは、その代表的な例です。これらの国々では、その土地の歴史や社会環境に合わせて、独自の英語が発展してきました。
例えば、
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このように多様な英語が存在する環境で、「ネイティブ英語」だけをお手本として学んできた私たち日本人が会話をしようとするとどうなるでしょうか?
次の章で、日本人の「ネイティブ英語」が直面する課題をみていきましょう。
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アジア英語圏のビジネス現場での3つのコミュニケーション課題
アジアのビジネス現場で、私たち日本人が直面しやすいコミュニケーションの課題は少なくありません。
ここでは、特に代表的な3つの事例を取り上げながら、具体的にどのような問題で背景には何があるのかを詳しく見ていきます。
【事例1:会議】アジア英語圏での議論が噛み合わず、意図しない結論に
国際会議などでは、日本からの参加者は流暢に見せようと複雑な言い回しを選びがちです。
しかし、参加者の多くが英語を第二言語とする非ネイティブの場合、これは誤解の原因になりかねません。
特に、日本人が得意な回りくどい表現は、ストレートな意思疎通を好む文化の人々には伝わりにくいのです。
ある日本企業が東南アジアの現地法人とマーケティング戦略を話し合った事例では、日本側担当者が流暢さにこだわりすぎて、説明が抽象的になり、「具体的に何をすべきか分からなかった」というフィードバックを受けました。
その結果、肝心な内容が伝わらず、曖昧な結論に終わってしまったのです。
【事例2:進捗管理】アジア英語圏の現地スタッフから報告が上がってこない
海外の現地法人やチームと連携する際、期待通りの進捗報告が来ないといった課題に直面することはよくあります。
これは、英語力だけではなく文化的な背景が大きく関わっていると考えられます。
例えば、インドのオフショア開発チームとの事例では、日本側が明確に報告を求めても遅延が解消しませんでした。
その背景には、上司にネガティブな情報(悪いニュース)を伝えにくいというインドの文化的な傾向があったのです。
日本側が「問題の早期発見」を意図していても、英語の指示だけでは文化の壁を越えられなかったという事例です。英語での指示は正しくても、その裏にあるビジネス文化への理解が欠けていたことが、進捗管理が滞る原因になっていたと言えます。
【事例3:交渉】英語圏の華人系企業との売掛金回収トラブル
アジア圏の企業との取引では、契約書を交わしても売掛金の回収が遅延する課題があります。その背景には、日本とは異なるビジネス慣習が存在する可能性が指摘されています。
例えば一部の企業文化では、契約を「絶対的なルール」と捉えるより、「状況に応じて交渉の余地があるもの」と考える傾向が見られることがあります。
また、巨大な組織構造による複雑な承認フローが意思決定の遅延を招いたり、担当者によってはキャッシュフローを最大化するために支払いを遅らせることを是とする考え方が存在したりするとも言われています。
このような場合、単に契約書を盾にするだけでなく、相手の組織構造やビジネス文化を理解し、粘り強く交渉する異文化対応力が求められるでしょう。
ビジネス交渉、特にアジアの華人系企業との場面では、契約書だけでなく、人間関係や慣習が結果を大きく左右します。
シンガポールの華人系貿易会社との売掛金トラブルの事例では、契約書があっても支払い期日を守ってもらえませんでした。その背景には、メンツ(面子)を重んじ、個人的な信頼関係を大切にする文化があったのです。
単に契約書の条項を英語で突きつけるだけでは、相手の心に響かないどころか、かえって関係をこじらせてしまう危険性さえあります。
この事例では、異文化コミュニケーション能力の重要性を示しており、一方的な要求ではなく、相手を思いやりながら粘り強く対話を重ねる姿勢が求められたと言えるでしょう。
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これからのグローバル人材に必須となるアジア英語圏で通用する英語スキル
アジアのビジネスの場で結果を出すには、ただネイティブのように英語が話せるだけでは、実は少し足りません。
そこで、異なるバックグラウンドを持つ人たちとスムーズに協力し、ビジネスを成功させるために必要となる3つの大切なスキルをご紹介します。
スキル1:アジア英語圏で誰にでも伝わる「シンプルで明瞭な英語」を話す力
アジアのビジネスで英語を話すとき、相手の多くはあなたと同じように英語が母国語ではありません。
だからこそ、難しい文法や、ネイティブ同士でしか通じないような言い回しは一旦置いておきましょう。「誰にでもわかる、シンプルで明瞭な英語」で話すことが、スムーズなコミュニケーションの決め手になります。
具体的に意識してほしいのは、次の4つのポイントです。
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この「明瞭な英語」は、あなたの考えを正確に伝え、認識のズレを防ぐための基本的なスキルになるはずです。
スキル2:アジア英語圏の各国の多様なアクセントを「聞き分けるリスニング力」
アジアで使われる英語は、ひとつではありません。
インド英語、シンガポール英語、フィリピン英語など、国や地域によって、話し方や発音にたくさんの個性があります。これらの多様な英語を聞き取るのは、なかなか大変です。
だからこそ、いろいろなアクセントに慣れて、どんな英語でも聞き取れる「リスニング力」を育てることが、成功への近道になります。
実践してほしいポイントは3つです。
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この「リスニング力」は、相手の伝えたいことを正確に理解し、信頼関係を築く上で、欠かせない力になります。
スキル3:アジア英語圏のビジネス慣習を理解した「異文化コミュニケーション力」
いくら英語が上手でも、相手の文化やビジネスのやり方をよく知らずにいると、「あれ?話が噛み合わないな」というズレが生じて、仕事がスムーズに進まなくなることがあります。
この「異文化コミュニケーション力」とは、言葉の裏にある文化的な考え方や価値観を理解し、それに合わせた心遣いができる能力のことです。
このスキルを磨くためのポイントは4つです。
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この「異文化コミュニケーション力」のスキルこそ、言葉の壁を越えて相手と心を通わせ、長く続く良いビジネス関係を築くために必要になる力です。
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まとめ|アジア英語圏で成果を出す人材育成のために
この記事では、日本のビジネスパーソンがアジアの現場で直面する英語の課題と、その具体的な解決策を見てきました。
これまでの「ネイティブのような英語」に偏った学び方では、多様な英語が飛び交うアジアの現実には、少し合わないかもしれません。アジアのビジネス現場で本当に通用するグローバル人材になるには、次の3つの大切なスキルが不可欠です。
- 「シンプルで明瞭な英語」を話す力
- 各国の多様なアクセントを「聞き分けるリスニング力」
- ビジネス慣習を理解した「異文化コミュニケーション力」
これらのスキルは、単なる英語力だけではなく、異文化を理解し、尊重する気持ちや、異なる背景を持つ人たちと「一緒にやろう」という前向きな意欲によって育まれていきます。
もし、
- アジア特有の多様なアクセントへの対応力を、社員に体系的に身につけさせたい。
- 「シンプルで明瞭な英語」でのロジカルな発言力を強化したい。
- 異文化理解を踏まえた実践的なビジネスコミュニケーション研修をお探しである。
といった課題をお持ちの企業様は、英語壱番の法人向け英語レッスンが、その解決の一助となるかもしれません。
アジアの現場で「本当に使える」スキル育成に特化したカリキュラムをご用意しておりますので、ぜひ一度ご相談ください。
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投稿者プロフィール

- 英語壱番 代表
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幼少~高校まで語学に興味はなく、大学時代に一念発起し、英語力に磨きをかける。卒業後、某メーカーの海外営業としてインドネシアに駐在し、東南アジアに位置するメーカーに製品の提案、販売に従事。現在は対面、オンラインの双方にて英語を教えている。カナダと中国に留学経験あり。英語のほか、中国語、インドネシア語も堪能。
資格:TOEIC 970、HSK 6級
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